ただし「全自動」はまだ先
一方で揺り戻しも報告されている。AIへの依存度が高まったことで案件の40%超が中止(出典:Gartner予測 (2025/6))、サービス品質の低下による人材再雇用(出典:TechSpot記事(2026年7月1日))、そして自律型エージェントへの統制が整備されているのはわずか5社に1社(出典:Deloitte 「The State of AI in the Enterprise 2026」)、というのが現実だ。
2026年、職場の風景が変わり始めている。AIは単なる便利ツールを超え、業務を代行し、意思決定を支援する「同僚」として組織に溶け込みつつある。本記事では、2026年7月開催の「BIPROGY FORUM 2026」で、人気を集めたセッション「AIで変わる業務と組織~Copilotを中心としたBIPROGYグループの社内実践最前線~」の内容を抜粋して紹介する。Microsoft 365 Copilot全社導入の実践事例から見えてきたAI活用の成果と課題を前後編でお届けする。
本セッションには、Microsoft 365 Copilotをはじめとする生成AI活用の最前線を担う日本マイクロソフト株式会社 AIビジネスソリューション本部 シニア Go-To-Market マネージャーの鈴木 哉氏、BIPROGYグループにおけるMicrosoft 365 Copilot全社導入の統括部門である、BIPROGY株式会社 情報システムサービス部 部長の目次 謙一、Microsoft 365 Copilot関連サービスの技術部門として、自社導入とお客さま向けサービス提供の両面を担う、ユニアデックス株式会社 クラウドサービス本部 本部長の盛田 豊が登壇。モデレーターは、BIPROGY株式会社 プロダクトマネジメント部 部長/AI CoE アライアンス担当の小林 亜紀子が務めた。
IDCの予測では、2028年に稼働するAIエージェント数は13億体に達するとされている。(出典:IDC(“Agent Adoption”ブログ 2025年12月)、および Microsoft Agent 365ブログ 2025年11月が引用するIDC予測)これは世界人口の約15%に相当する規模であり、「AIは職場の同僚になる」という言葉がもはや比喩ではないことを示している。NVIDIAが描く「社員1名:エージェント100台」の構想や(出典:NVIDIA CEO Jensen Huang(GTC 2026))、その波が大企業へ着実に届いていることを物語る。
一方で揺り戻しも報告されている。AIへの依存度が高まったことで案件の40%超が中止(出典:Gartner予測 (2025/6))、サービス品質の低下による人材再雇用(出典:TechSpot記事(2026年7月1日))、そして自律型エージェントへの統制が整備されているのはわずか5社に1社(出典:Deloitte 「The State of AI in the Enterprise 2026」)、というのが現実だ。
「”人とエージェントのハイブリッド設計”こそが、成否を分けるカギといえます。」(BIPROGY株式会社 小林 亜紀子)
小林 亜紀子(モデレーター)
BIPROGY株式会社 プロダクトマネジメント部 部長/AI CoE アライアンス担当
AIエージェント時代の到来を見据え、その変化にどう向き合うべきか。BIPROGYグループは、まず全社員がAIを活用できる環境づくりに着手した。その中核を担うMicrosoft 365 Copilotについて、導入の経緯と選定のポイントを紹介する。
BIPROGYグループ(BIPROGYおよびユニアデックスなど)は2026年6月、約7,700名の全従業員にMicrosoft 365 Copilotを展開した。選定理由は大きく三つだ。
● 実績:段階的な試行で有効性が実証済みだった目次 謙一
BIPROGY株式会社 情報システムサービス部 部長
AIツールを全社員に配布しただけでは、期待した効果は生まれない。重要なのは、AIを個人の便利ツールにとどめず、業務プロセスの中に組み込んでいくことだ。
全社展開にあたって同社が直面したのは、「AIが組み込める業務を選定してほしい」と各部署に依頼しても具体的な動きが生まれないという課題だった。そこで導き出したのが、AI組み込み「5型化」だ。
AI組み込みを、① チェック業務 ② 文書作成 ③ 問合せ対応 ④ 集計業務 ⑤ 会議改善の5つの型に分類し、各部署で対象業務を選定。型化することで、一部署で成功した実装を他部署へ横展開できる仕組みを構築。各部署から選定された業務について、業務数と対象社員数をもとに効果規模で3つのグループ(Tier1~3)に分類し、現在は効果の大きいTier 1業務を中心に推進している。
部門単独では実装が難しい場合も多いため、実装・型化を支援する「AIサポートチーム(AIST)」を情報システムサービス部内に編成して、実装面を支援しながら推進していく体制を整えている。
AI組み込み「5型化」とあわせて実施したのが、“身近にAIを使えるようにする”取り組みだ。ここからは、社員が日常業務の中でAIを身近に感じるようになった具体的な成果を見ていく。
旧来のイントラネット検索は課題が多く、「自ら探す」負荷が大きかった。Copilot導入と併せてイントラネット検索をCopilot Searchへ移行し、SharePointに社内情報を集約。その結果、2か月で検索利用が2.7倍に拡大した。
「CMS上のコンテンツが検索に引っかからない問題を解消するため、FAQや社内規定など、情報の置き場所を暫定的にSharePointに移動するなどの対策を講じた」(目次)。
「自ら探す」から「AIに聞く」時代への転換が始まっている。
「会議は実施するが、次につながらないままになる」という状態が散見されていた。CopilotによるAI議事録・要約・タスク整理のガイドラインを策定・公開したところ、Teams会議でのAI利用率が81%に到達(2026年6月時点)。「会議は情報共有の場から議論・実行の場へ」という変化が組織内に広がりつつある。
日常業務では着実な成果が現れ始めている一方で、AI活用を全社規模で定着・拡大させるためには、効果測定や組織運営、データ整備など新たな課題にも向き合わなければならない。
目次は全社AI展開を進める中で直面している課題として以下の3点を挙げる。
● 評価・効果問題:単純な工数削減だけでなく意思決定の高度化も含めたROIをいかに可視化するか
● 温度感・ばらつき問題:積極的な組織と慎重な組織の間にある温度差。組織トップ自身が体験し率先することが鍵
● データ問題:AIが参照できる情報の質と量の確保。データ整備・ナレッジ蓄積が最重要課題
2026年4月にCSO直轄の全社横断組織として新設された、全社的なAI活用の推進組織である、AI CoE(Center of Excellence)に寄せられる問い合わせについて、「AI CoEへの問い合わせの約3割が『どの情報を入力していいか・セキュリティーが心配』というもの」(小林)。AI活用の効果が見え始めた一方で、その価値をさらに高めるための運用や評価の仕組みづくり、そして安全に活用し続けるためのガバナンス整備が次のテーマとなる。
後編では、こうした「攻め」と「守り」の両面について深掘りする。
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